Part 02

判断・技能編

ジャストを極める

ITEM 09〜15

Master the JUST

  • 読了目安 約17分
  • 原書 p.24〜39

09ジャストゴーを極める

ジャストゴーというのは受けさばきのことです。外野手がボールを捕球したとき、走者の足が三塁ベース上、同時のとき。それをどう判断するか。

まず走者の能力と相手外野手の能力を比べてみます。走者の足の速さ、走塁のうまさと、外野手の肩の強さ、コントロール、守備位置。これを比較して走者の能力が上だった場合(走者の能力>外野手の能力)ゴーです。

外野手が強肩でコントロールもよくてポジショニングがよい。走者の能力よりも、外野手の能力の方が上だなという場合(走者の能力<外野手の能力)は、三塁で止めなければいけない。

能力の高い外野手というのはポジショニングもよいわけです。ピンチのときに、いつも同じ場所で守っているわけではなくて、ポジショニングを変えてくるわけです。相手チームもこちらを研究して準備してくるわけですから、いいポジショニングを取ってきます。これは向こうの方が上だなと思ったら、ジャストの場合は止めます。

では走者の能力と外野手の能力がイコールの場合(走者の能力=外野手の能力)どうするか。ここには運も絡んできます。運とツキです。これは理屈を超えたものですから、どうするか。ここをコーチャーはジャッジするわけです。

ここはイコールだけれども、行かせることによって相手の悪送球を誘う、コントロールの乱れを誘うとか。コーチャーの頭の中でセーフのイメージが上回った場合はゴーです。

逆に外野手の好返球でアウトになりそうだというイメージが湧いた場合はストップ。

手堅くいくというのももちろんありです。はじめのうちは経験が少ないから迷ってしまうものです。そのときは止めておく。三塁コーチャーとして経験値が上がることによって、ジャストに応用が利くようになってきます。

打球方向による違い

打球がレフト前へ飛ぶのか、センター前へ飛ぶのか、ライト前に飛ぶのか。それによっても本塁がセーフになる可能性は変わってきます。

レフトへ打球が飛んだ場合、走者が三塁ベースを回っていないと本塁はセーフになる確率は低い。レフト前、ライト前では、ジャストでは厳しい場合が多い。

センター前へ打球が飛んだ場合、これも走者は三塁を回っていればゴー、ジャストでもいける可能性があります。

今、述べたレフト、ライト、センターへ打球が飛んだ場合のジャストの判断ですが、これはいずれも、通常の前進守備の場合での話です。外野手が深めに守っていた場合は、いずれもセーフになる可能性が高くなります。かなりの前進守備の場合は逆に、セーフの確率は低くなります。

上級編〜フェイクを使う

止めるにしても、回すようなふりをして止めるという技もあります。一般的にはなるべく早く指示を出すように言われますが、回しながら、ぎりぎりまで引っ張って止めるやり方を私はあえてすすめます。それによって相手外野手は「え? ホームへ行くのか」と肩に力が入り、エラーをしてしまうかもしれません。三塁コーチャーの判断としては止めているんだけれど、フェイクにだまされて相手外野手は、回ると思って焦りが出てきます。

だから、ライト前ヒットの場合は、なるべく引っ張る。三塁ベースと本塁との間の4分の1ぐらいまでは引っ張れます。ライトから三塁までは距離があってすぐに返球は来ませんから。

センター前ヒットに関しても深く行けます。

レフト前ヒットの場合は気をつけなければいけません。レフトから三塁へは一直線に投げられて、オーバーランをしてアウトになってしまうことがあります。ライト前安打、センター前安打とレフト前安打では、走者がオーバーランしてよい距離が違います。ゴーなのかNO GOなのか、レフト前安打の場合は早く判断して指示を出さなくてはいけません。ライト前安打のときは遅くてもよいです。センター前安打のときはその中間です。

経験値の少ない最初のうちは「迷ったら止めよ」ですが、慣れてくると応用ができるようになって、判断に幅が出てきます。ジャストゴーを極めること、それが三塁コーチャーの醍醐味とも言えるでしょう。

10止めゴー、ストップゴー

これは上級編です。外野手が捕球したとき、走者が三塁ベース手前だった場合、三塁コーチャーは走者に「NO GO(ストップ)」の指示を出します。

ですが、これでOKではありません。ここでアクシデントが起きる可能性がある。外野手がファンブルしたり、捕球してから思わぬところへ投げてしまったり、中継プレーでファンブルしてしまうケースがあります。ここを見逃してはいけません。一度走者を止めておいて、また「ゴー」です。これが「止めゴー」「ストップゴー」です。

これが試合ではよく出てくるんです。甲子園なんかでも、走者を止めてしまって、相手野手がボールをファンブルしている間にゴーしたら行けるのに行かないという場面を見かけることがあります。

止めておいて行かせる。三塁コーチャーはそのケースを想定して、止めてもすぐゴーを出すことを意識していないといけません。一度止めたんだけど、行かせる。ここの切り替えですね。

もちろんそれはコーチャーだけが意識していてもできません。走者もベースランニングでは止まったところで気を抜かない。止まっても次を狙ってすぐ走ることを常に意識しておく。そういう練習をしておくことが必要です。

コーチャーは止めたら必ずボールの位置を指さして確認する。外野手がしっかり捕球してしっかり投げて、中継もうまくいっていればそのままストップ。野手がボールを弾いたり中継プレーが乱れたりしたら、すかさずゴーです。

それで点を取れたのに、ストップしたままで得点機を逃してしまうことがあります。レベルの高い試合になればなるほど、1点2点が効いてきます。1点の攻防、1点の差で勝ち負けが決まってしまうんです。

11コーチャーの技能

コーチャーの技能として大事なものは以下の5つです。

1. 場面の把握

状況、イニング、アウトカウント、ボールカウント、打順、得点差、走者の能力、相手内野手の能力、風の強弱を把握しておくことがまず大事です。得点差によっては、無理して1点を取りにいくよりも、走者をためた方が相手は嫌がる場面もあります。

2. ポジショニング

コーチャーボックスの中のどこに立つか。コーチャーはボール、走者、相手野手の3つが見えるところに立つことが必要です。この立ち位置に関してはあとのページで詳しく説明します。走者がいないときは、打者へ指示を出していくことになりますから、コーチャーボックスの中で一番打者寄りに立ちます。走者がいないとき、コーチャーは何もしなくていいというわけではありません。球種の伝達は禁止されていますが、今、アウトカウントはこうで、こういう状況だから、このボールを狙っていこう、ということを打者に伝えることはOKです。

3. タイミング

これも大事です。三塁コーチャーから走者へ指示を送るタイミングは、一般的にはなるべく早くと言われますが、極力ギリギリまで引っ張る方をあえて私はすすめます。なぜかというと、三塁で止めるか止めないかの判断をなるべく相手外野手に分からないようにしたいからです。捕球時、走者が三塁に止まると分かっていたら、外野手はプレッシャーなく捕球することができる。走者が三塁を回って本塁へ突っ込むかもしれないと思って捕球したならば、外野手にはそれがプレッシャーとなり、注意が走者へ向いてしまう。捕球時にファンブルしてしまう可能性があるのです。そのときは、走者が三塁ベース手前でもゴーです。

4. 指示、動作

指示は声だけではなく、身体全体でやること。ジェスチャーです。上級編としては、止めるジェスチャーをしたときはゴー、回すジェスチャーをしたらストップ、というのもあります。フェイクですね。「え? この当たりで回すのか」と相手外野手を焦らせてミスを誘うのです。

あるいは上級編としては、三塁コーチャーが何もしないときはゴー。止めるときだけストップのジェスチャーをする。コーチャーは止めることが仕事だから、何もしなければゴー。止めるときしか出さないというやり方もあります。

5. 声

重要度で言うと、ボディランゲージが第1で、声は第2です。両手を必ず口に添えて声を発する。大きな舞台になればなるほど、スタンドの歓声が大きくて声は聞こえなくなるからです。もう1つの理由としては、複数走者がいる場合、例えば前の走者にはゴーを出して、後ろの走者にはストップの指示を出さなければならないことがあります。声でその指示をした場合、後ろの走者への「ストップ」が前の走者に聞こえてしまって、前の走者が止まってしまうこともある。だから声の指示を出さないこともある。指示はジェスチャーが第1、声は第2です。

12三塁コーチャーの指示動作

ベースストップ

三塁ストップだから、オーバーランせずにベース上で止まらせるということです。オーバーランストップと違ってこのベースストップは、早めに指示を出さないといけません。急にストップをかけると、止まるときに走者が足を痛めてしまう可能性があります。ベースという物体があるところで止まるので、急に止まるとつまづいたり足を痛めてしまうことにつながります。しっかり距離を取って早めに指示を出しましょう。

オーバーランストップ

打球が飛んだのがレフト前なのか、センター前なのか、ライト前なのかによって、距離感が違ってきます。止めるジェスチャーも、それによってちょっとずつ違ってきます。味方の得点能力を限りなく高めたいわけです。そのために、コーチャーがルール上、できることをすべてやるという意識を持ちましょう。

スライディング(右・真ん中・左)

走者が三塁へスライディングするケースでは、どっちに滑るのがよいかを指示してあげなければいけません。三塁手から見て左側に返球がきたのに、そっちに滑ってしまってはアウトになってしまいます。その場合は右側に滑ればタッチするのに距離がありますから。右へ滑るのか、左へ滑るのか、真っすぐ滑るのか、指示をしてあげましょう。間一髪の攻防では、どっちに滑るのかが大事になってきます。走者も低い姿勢できますから、コーチャーも姿勢を低くして、三方向を示してあげる。タイミング的にどこでもよければ、真っすぐ滑るのが一番速いです。

カットプレーだから滑らなくていいような場合は、普通に止まっておけと、そういった指示も出してあげるといいです。

ただ、止めても止めゴーがありますから、ボールがそれたらすぐゴーです。コーチャーはこれを意識して走者に促すこと。これができるチームとできないチームでは得点能力が変わってきます。

ファウル

ファウルの場合は両手を左右に振る動作をつけてあげましょう。全力で走っている走者に、コーチャーもシンクロしていくように、動きをつけてファウルであることを伝えてあげるとよいです。

戻れ

例えば無死もしくは1死一塁で、監督からのサインはヒットエンドラン。打者が外野フライを上げてしまった。このときは走者に「戻れ!」といち早く伝えなければいけません。

ただ、外野手が落球したら、ゴーなんですね。走者は一生懸命戻りますが、戻りながら止めゴーです。これが野球の攻防では重要。止めたら止めっぱなし、戻ったら戻りっぱなしではなく、戻っておいて、相手がエラーやミスをしたらすぐゴーです。これができるチームは少ないです。そこを想定していないんですね。

いいチームというのは、試合で起こりうることを想定して練習からやっている。そうじゃないチームは、試合で起こりうることを想定できていないんですね。ただありきたりの走塁練習をやっているだけ。そうじゃなく、試合で起こりうることをあれこれイメージして、練習から取り組んでいきましょう。

アウトカウント

1死ならばライナーバックやゲッツーがあります。インプレーになる前に、アウトカウントをランナーに伝えて確認しておく必要があります。2死なのに走らなかったり、走者は分かっているはずのことを忘れてしまっていることが結構あるものです。

今、アウトカウントはこうだから、次はこうするよと、アウトカウントによって走者が何をしなければいけないのか、伝えておいてあげましょう。

外野手の位置

相手外野手のポジショニングを走者にも伝えておきましょう。いい外野手ほど極端なポジショニングをしてきます。定位置におらず、打者によって、またアナリストからの指示によって守備位置を変えてきます。そこをコーチャーは見ておかなければいけません。また、シートノックの段階で、外野手の肩とコントロールもチェックしておきたいところです。

外野手のポジショニングを確認して、深めに守っているようなら、走者の足が三塁ベースの手前でもゴーさせることがあります。定位置、前進守備だったら、普通は手前ならストップですが、外野手が深めに守っているようならばゴーもありです。

ライナーバック

無死もしくは1死の場合、ライナーの場合は気をつけろと。「ライナーバック!」と大きな声で走者に伝えておきましょう。分かっていても、意外と忘れてしまっていることがあるものです。走者が飛び出してしまわないよう、インプレーになる前に伝えておきましょう。

ゴロゴー

ゴロゴー、ゴロの場合は次の塁へ行くんだよと。これも走者には前もって大きな声で伝えておくようにしましょう。

タッチアップ

タッチアップがあるぞというのも、事前に声をかけて念押ししておくべきです。分かっているはずなんだけれど、念を押していなかったばかりに走者が忘れてしまっていた、というのがあるんです。

タッチアップの場合、普通、コーチャーは走者の近くにいるんですけど、私は走者に正対するような位置に(本塁寄りに)下がっておいて、ボールと野手と走者が見える位置にいて、そこで指示をするようにしています。走者がスタートしても止められる位置ですね。走者とコーチャーが同じように並んでしまう場合があるんです。そうするとストップをかけられなくなります。

13コーチャーの声

コーチャーの声も、走者に伝えるための大事な武器です。三塁コーチャーと一塁コーチャーでは、声の出し方、役割が変わってきます。

一塁コーチャーは攻撃の起点となるところに立っていますので、現在の状況を走者に伝えなければいけません。

三塁コーチャーはホームを陥れるための、得点に結びつく、結びつかないのぎりぎりのところに立っていますから、走者に判断を伝える言葉が必要です。

一塁コーチャーの声

攻撃の起点になるところに立っていますので、走者には今、こういうチャンスの状況なんだよと、テレビ中継やラジオ中継のように整理して伝えてあげるんです。ともすれば球場のわーっという熱気や雰囲気の中で、そのムードに流されそうになってしまいますから、コーチャーは冷静にシチュエーションを声に出す。

こちらがチャンスということは、相手にとってはピンチになるわけです。声に出してその状況を走者や打者に伝えると、相手バッテリーの耳にも入ります。そうすると、ピンチなんだと相手にプレッシャーをかけることもできます。

走者がいないときはコーチャーボックスのホームベース寄りに立って、打者に声をかける。チームとして徹底してきたこと、例えばベルトラインのボールを狙っていこうとか、ベルト上の甘いボールはどんどん狙っていこうとか、今、このピッチャーはこのボールがきてるから、そこを狙っていこうとか。そういう点を一塁コーチャーは伝えていきます。「データ通り、データ通り」「流れがきているよ、流れがきているよ」というように、2度繰り返して言うのもよいです。

三塁コーチャーの声

三塁コーチャーは得点に結びつくぎりぎりのところに立っているわけですから、キレのある声で走者にポイントを伝えてあげる。

走者二塁の場合は「外野の位置を見て!」と外野のポジションを見るように、指をさして声を出す。さらには「ゴロゴー」「タッチアップあるよ」なども確認の声を出しておくのがよいでしょう。もっと言えば、暴投、捕逸もあるよと注意をしておく。低い軌道のボールが行ったときは、弾いてからや転がってからではなく、「これは転がるな」と思ったら声を出して走者にスタートを促す。あるいはそういうサインを決めておくとよいでしょう。

走者と三塁コーチャーは、つながっていなければいけません。1死一塁で走者は二塁、予め「ヒット1本で回すよ」と走者に声をかけて、ワンヒットで本塁まで走るぞという準備をさせておくことも必要です。本塁まで行くのか行かないのか、ぎりぎりの判断にはなりますが、走者には全力で本塁に向かう姿勢でいてほしい。ですから、三塁コーチャーと走者は早い段階からシンクロしておきたいのです。

走者が最初から「三塁ストップだな」と思って走っていると、三塁ベース直前で「GO」の指示が出た場合、「あれ?」となってしまいます。そこでスピードがわずかに緩んでしまう。本塁でクロスプレーになった場合、0.1秒の遅れがアウト、セーフに響いてくるんです。だから、走者と三塁コーチャーは早い段階からシンクロしておかなければいけないのです。

三塁コーチャーも、走者がいないときは、コーチャーボックスのホームベース寄りに立って、打者に普段からやっていること、狙い球などを思い出させるような声を出していきます。

14コーチャーのディフェンス……①

コーチャーの出番は攻撃時ですが、攻撃中でも「ディフェンス」を意識しなければならないときがあります。味方のチャンスを「守る」ための「ディフェンス」ですね。特によく起こるのがここで説明する4つのケースです。味方のチャンスを守るため、注意してほしいです。

走者に指示の後はボールの位置を指さし確認

走者が好走塁で三塁に達して、ベンチもスタンドも大興奮。走者もコーチャーもガッツポーズなんかやりがちですが、ここで気をつけなければいけないのが、隠し玉。せっかくのチャンスが、隠し玉アウトで潰れてしまったら、ベンチの雰囲気も悪くなり、試合の流れをみすみす相手に渡してしまうことになります。一流の野球選手でも隠し玉でアウトになることがあるんですから、アマチュアの選手は本当に気をつけなければいけません。

走者が三塁に進んで大チャンス、みんなが盛り上がっていても、コーチャーは冷静に、必ずボールの位置を指さし確認する。コーチャーはボールから絶対に目を切ってはいけません。

二塁走者への牽制、投手が足を上げ逆回転の牽制に注意

走者二塁のときに気をつけなければならないのは、投手の逆モーションによる牽制球です。通常の牽制は振り向いて投げるものですが、ここ一番のとき、逆モーションで足を上げてターンで牽制球を投げてくることがあります。これに走者は結構引っかかってしまうんです。走者としては、次の塁へ行きたいという気持ちが前に出てきますから、投手の足が上がった瞬間にスタートを切りたい心理が働いています。そこにターン。足を上げて逆モーションの牽制がきますから、これは気をつけないといけない。コーチャーが大きな声を出して走者に注意を促しましょう。

二塁走者の送りバント、打者ストライク見逃しの際、飛び出しアウトに注意

無死二塁、送りバントのケース、ところが打者がバントできず、走者が飛び出してしまい、捕手からの送球でアウトになってしまうケース、よくあります。打者と走者との間で、しっかり取り決めていくことが大事です。投球が構えたバットより高ければボールになるからバントしない、ボールが構えたバットより低いときだけバントする、とか。

結構、この取り決めがされておらず、アウトになってしまっているケースが多々見られます。普段の練習からそこを取り決めておいて、意識しておかなければいけません。

走者一、二塁、二塁フォースアウトからの三塁送球で三塁走者のオーバーラン飛び出しアウトに注意

例えば無死走者一、二塁、遊撃手にゴロが飛んだ。6−4−3のダブルプレーかなと思われたところで、フォースアウトを取った二塁手が、一塁は間に合わないとみて、一塁に偽投したのち、三塁に投げてくるケースがあります。二塁走者が三塁オーバーランしたところを狙っているんですね。これは気をつけないといけない。優秀な内野手はそういうことをしてくるんです。三塁コーチャーはこれを予想して、三塁をオーバーランしそうな走者に「止まれ!」と大きな声をかけなければいけない。回ってからのオーバーランストップではなくて、早めに止めることが大事です。

15コーチャーのディフェンス……②

うまい牽制はボークすれすれ

コーチャーは、相手投手の牽制のくせを知っておかなければいけません。その上で、走者に対して、こういう牽制がくるから気をつけろと言っておくことが必要です。そして、ボークすれすれの牽制に対しては「ボーク!」と声を出してアピールする。

うまい牽制というのはボークと紙一重です。ボークというのはルール上、「疑わしきは罰する」なんです。ルール上、ボークが疑われるような牽制球は投げてはいけないんです。ということは、うまい牽制球というのはだいたいボークに近い。投手のレベルが上がってくると、審判からも牽制が速過ぎて見えないんですね。半分ぐらいはボークに近いでしょう。だから、「今の牽制球は怪しいな」「ボークじゃないかな」と思ったときは「ボーク!」と声を出して審判にアピールしていいんです。ルールブック上、「疑わしきは罰する」です。

投手の意識「赤」「青」「黄」

また、投手の走者に対する意識を信号機に例えると以下のようになります。

  • 赤……投手が走者意識。
  • 青……投手が打者意識。
  • 黄……投手が走者意識か打者意識か微妙。

まず「赤」のとき。投手が走者に意識を向けてることが分かるときは、牽制球が来る可能性が高いですから、走者は気をつけなければいけない。スタートを切ってはいけません。

次に「青」のとき、投手の意識が打者へ向かっているのが分かるとき。このときはスタートを切るチャンスです。

うまい投手には「赤」と「青」の間に「黄」がある。走者と打者、どちらに意識を強く向けているのか、見ているだけでは分からない。レベルの低い投手は、赤と青がはっきりしているんですね。赤なら気をつけろ、青なら大丈夫だから早くスタートを切る。いい投手には「黄」があります。「黄」のときはスタートを切ってはいけません。

どんなにいい投手でも牽制にだけはくせが出てしまうものです。コーチャーは投手を観察して、「赤」「青」「黄」と走者に声をかける。「赤」「黄」のときはスタートを切ってはいけないよ、「青」のときはスタートを切るチャンスだよと。

相手に読まれているときは、色を変えてみたり、あるいは「1」「2」「3」とか、数字に置き換えてもいいんですね。

「1!」とか「3!」とか大きな声で言っていると、相手投手や野手は「何を言ってるんだろう?」「何をやってくるんだろう?」と疑問に思うわけです。相手に「?」を与えず、気持ちよく守らせてしまうのが一番よくない。「ここは走ってこない」と思わせたら、投手は安心して思い切って投げてきます。動作や言葉で相手の投手や野手に「?」を持たせることもコーチャーの重要な役割のひとつです。