01超機働力〜0.2秒を制する
0.2秒を制す
全力疾走している走者は0.1秒で70cmぐらい進みます。0.2秒ならば1m40cmになります。ボールが相手の外野手から内野手、そして捕手に戻って走者を刺しにきます。クロスプレーになりそうなとき、この70cm〜1m40cmがアウト、セーフを分けるんです。
70cm〜1m40cmというのは塁上の走者の第1リード、第2リードで詰めることができます。この一瞬の間、0.1〜0.2秒の攻防を、走者とコーチャーが協力して働く「協働」で制して得点を重ねていきます。
本書ではアクティブでアグレッシブでチャレンジングな走塁もみなさんに提案していきます。インプレー中は常に次の塁を狙っていくというのが「GO」「NO GO」理論です。走者三塁、投手がボールを持って後ろを向いている間に走者がホームを突いてサヨナラゲームになったケースもありますから。
そこまでやったときに、思わぬジャイアントキリング(大番狂わせ)を起こせる可能性が出てくるんです。野球はルール上、ヒットを重ねなくても得点が入るスポーツです。強豪チームと対戦し、相手が好投手ならば、ヒットを続けるのは簡単なことではありません。ヒットが出ない前提でも2〜3点取るよという野球を目指します。全国大会の決勝でノーヒットで勝利し全国優勝したチームもあります。
0.1〜0.2秒の攻防を走者とコーチャーの「協働」で制していく野球、それを私は「超機働力野球」と呼んでいます。これは、いけいけどんどんで回せ回せ、ではないんです。止めるべきところは止めて、インプレー中は常に次の塁を狙う。走者とコーチャーの「協働」の上に、打者がヒットを重ねれば、さらに得点を重ねることができます。「超機働力」で勝利を目指していきましょう。
「超機動力」ではなく、「超機働力」です。ロボットがやるのではなく、人がプレーする。そういう意味で私はにんべんをつけて、「働」という字をつかいます。
コーチャーの指示は「GO」か「NO GO」
Baseballのルールが最初に定められたのは1845年と言われています。それから段々と現在のルールに進化を遂げてきました。調べてみたのですが、はじめの頃のルールには三塁コーチャーの定義がなく、三塁コーチャーボックスというのも存在していませんでした。では、なぜ三塁コーチャーが必要になってきたのでしょうか。
走者が一塁から二塁、三塁へと走ってゆきます。しかし、打球が転がったところが走者から見ると死角になってしまう。全力疾走してくる走者にとって見えない部分を判断して止める、その役割を担う人が必要だということで、コーチャーボックスが設けられたものと思われます。そういった野球の淵源をさかのぼったときに、コーチャーのやるべきことは基本的には2つです。
1つは「GO」。
もう1つは「NO GO」なんです。「STOP」とはちょっと違うんです。
「NO GO」というのは、走者が全力で本塁へ向かおうとしているのを、一旦遮るんですね。だけど、相手野手のファンブルがあったりした場合はすぐに切り替えて「GO」の指示を出すんです。
「STOP」を出してしまうと、走者はエンジンを切るとまでは言いませんが、一度ギアを低いところに入れてしまっている。だから、再び「GO」を指示しても切り替えるのに一瞬ですが、時間がかかってしまいます。
これが「NO GO」と「STOP」の違いです。コーチャーの指示は、常に「GO」か「NO GO」なんだということを頭に入れておかなくてはいけません。
02コーチャーの前提条件
走者は全打球、次の塁、本塁を狙う意識を
走者は基本的には全打球、次の塁、本塁を狙う。その意識をまず全員が持ち徹底する。
その上で、コーチャーは走者と同じ走塁感覚を持ちながら止める役割を持っているわけです。走者は全打球、全力で次の塁、ホームを狙う役割です。コーチャーは止める役割を担う。二者がシンクロするためには、コーチャーは走者と同じ感覚を持っていなければいけません。攻守交代でベンチから自分の持ち場、コーチャーズボックスへ向かうときは、コーチャーは走者と同じスピード感を持つことが理想です。
コーチャーがゆっくり歩いていて、走者だけが全力で走っている、なんていうのではシンクロしないんです。走者が速い動きをしているんだから、コーチャーも速い動きをする。それによって脳と神経がお互いに共鳴し合うんです。コーチャーがゆっくり動いていたら、走者だってゆっくりした動きになってしまいます。
コーチャーボックスへは全力疾走!
コーチャーには、自分も走者として出塁しているぐらいの意識が必要です。いざとなったら、コーチャーが代走として入る、そのぐらいの意識を持ってほしい。それが0.1〜0.2秒の世界で戦う上での大きなポイントになります。
コーチャーも感覚を研ぎ澄ませておくという感じですね。走者だけではなく、コーチャーからも次の塁を狙う雰囲気を醸し出しておく。自分のチームの中でシンクロさせておくことによって、「狙ってきているな」ということを相手チームにも印象づけることができるんです。
代走を見てると、これは相当準備してきている代走だなというときと、ふわっと入ってきた代走だなというときとが分かるんです。なんとなくふわっと入ってきた準備してない代走と、準備万端で次の塁を狙っている代走とでは、一塁ベースに立ったときから雰囲気が違う。それは単に足が速いとか遅いとかではないんです。
準備して、投手の牽制のくせも研究してきましたよという雰囲気の代走が出てきて、さらに一塁コーチャーと三塁コーチャーも、走者とシンクロした速い動きをしていたら、守ってる野手はすごく嫌です。代走が効いてくるわけです。
そういう雰囲気を醸し出すために、コーチャーもいい走者を目指していきます。
03二塁走者は6秒3〜6秒8で本塁へ
二塁走者は、打者が打った瞬間から高校野球レベルでは6秒3〜6秒8のタイムで本塁へかえってこなければなりません。この数字、この基準を頭に入れておきましょう。
陸上競技の場合はピストルが鳴ったときがスタートですし、スタートラインより前の位置から走り始めることはできません。野球の場合は陸上競技と違って、二塁走者はフライングOKですし(タッチアップのときを除く)、スタートより前から走り始めることもできます。自分にはスピードが足りないなと思ったらスタートを早くするとか、リードを大きくするとか、それで調整するんです。技術を磨くことで、タイムを縮めることができるんです。
逆に言うと、守る方は、外野手は打者が打った瞬間から6秒3〜6秒8の間に本塁へ送らないと二塁走者の生還を許し、点を取られてしまいます。
三塁コーチャーは、試合前ノックや、あるいは相手チームの試合の映像、動画などがあれば、外野手のバックホームのタイムを全部計っておくこと。打った瞬間、ヒッティングポイントから外野手がボールを捕って、ホームにボールが送られるまで何秒かかるのか。試合前ノックならば、ノッカーが打った瞬間から外野手が捕って本塁にボールが送られるまで何秒かかるか。これらを計っておきましょう。
外野手の送球、コントロールはどうか?
外野手のバックホームの際のコントロールがよいか悪いかもチェックしておく必要があります。投手と同じで、野手もコントロールが大事。あの外野手は肩が強くて、捕ってからのバックホーム、すごく速いボールを投げるんだけど、コントロールがよくないねと。ストライク返球がくると6秒台ですが、ボールがそれてしまうことが結構あると。そんなときは狙うチャンスですね。ジャストだけど、送球がそれる可能性があるから行かせる、と判断することがあります。
捕手の二塁送球タイムも計っておく
相手捕手の二塁送球タイムも計っておきたいです。イニング間の投球練習のとき、捕手は最後の一球を捕ってから遊撃手または二塁手に送球します。この二塁送球が何秒かかるか。コントロールがよいのか悪いのか。野手の構えたところにピタリと投げることができるか。そうしたことが、一塁走者が盗塁を仕掛けるかどうかの判断基準になります。
もっと言うと、自分のチームの各打者の走るタイムもおさえておきたいです。二塁から打者が打って何秒で本塁にかえってくるか。練習で1番打者から9番打者まで計っておいて、回すか止めるかの判断材料にしていきます。相手の外野手の能力にもよりますが、二塁から6秒5でかえって来られる選手ならばジャストでも行かせますし、7秒かかってしまう選手ならば止めなければいけません。
「あの外野手は肩が強い」「あの選手は足が速い」という感覚的なところだけではなく、ストップウオッチを使って数字として計っておくんです。スピードガンがもしあれば、外野手のバックホームの球速、捕手の二塁送球の球速を測っておくのもよいでしょう。
04コーチャーの定義
まず本書の中の大前提である「超機働力〜0.2秒を制する」、「GO」「NO GO」理論について説明しました。ここではコーチャーの定義についてです。
故・野村克也監督の言葉に「捕手は監督の分身である」というのがあります。私自身も明治大野球部に入ったとき、野村さんの本を読むように言われて『敵は我にあり』という本を読みました。それが自分にとっての最初の野球のテキストになりました。
野村さんは現役時代は捕手でしたから「捕手とは監督の分身である」と書物に書かれています。この言葉を借りて、私は「コーチャーとは監督の分身である」と定義づけました。
高校の話になりますが、私が所属していた東京・日大二高野球部の高本晴夫監督(当時)は、コーチャーである私にこう言いました。
「本当は、監督である私がこの場所(コーチャーズボックス)に立ちたいんだよ。だけどルール上、それはできない。だから川島、頼むぞ!」
そう、コーチャーとは監督の分身なんです。声の力、動作の力、表情の力を使って、味方のチャンスを最大限に生かすこと、得点能力を上げていくこと、それがコーチャーの仕事です。バットやグラブやボールは持っていないけれど、声、動作、表情で打者や走者に伝えていくわけです。
そのためには、監督がどういう野球をやりたいのか、監督の思いも含めてしっかり理解していないといけません。
コーチャーとして一人前になること、それは簡単なことではありません。日本一の三塁コーチャーと言われた伊原春樹さん(元西武ライオンズ監督)は、三塁コーチャーとして一人前になるには2年かかる、というようなことを著書に書いていました。コーチャーとは、それだけ経験を必要とするポジションなのです。
プロ野球であればシーズン140試合以上もの試合経験を積むことができますが、高校野球の2年半ではそういうわけにはいきません。大学野球だって4年間という限られた期間です。経験値が少ないから、回してはいけないところを回してしまったり、回さなければいけないところを止めてしまったり。
走者は全力でホームに向かって走ってきます。一瞬の攻防、0.1〜0.2秒の攻防が、70cm〜1m40cmの差となって、ホームでのアウト、セーフを分けるんです。
これほどに大事な役割を持つコーチャーについて、体系立てて解説して指導する書物が意外にも今までありませんでした。
私は今まで野球の試合を数多く見てきました。甲子園でも地方大会でもそうですが、判断を誤って大事なチャンスを潰してしまい、悔しがるコーチャー、チームを何度も見てきました。彼らに伝えていれば、もしかしたら防げたかもしれない。
そんな思いから今回、これまで自分が学んできたこと、自分が実践してきたことを本にしたいと思ったのです。
本書では、私のこれまでの経験において培ってきたコーチャーに関する考え方やノウハウを基本から応用まで、体系立てて説明していきたいと思います。コーチャーボックスに立つみなさんには、本書に書いたことを学び、実践し、さらには自分なりにアップデートしたりブラッシュアップしたりしていってほしいです。
まず本書でゼロから1を出しました。あとはみなさんがどう本書を利用してコーチャーとして成長できるか。本書は三塁コーチャーの初めてのテキストの役割を果たしていきます。
05コーチャーの種類
コーチャーには三塁コーチャー、一塁コーチャー、ホームベースコーチ、ベンチコーチ、セルフコーチの5種類が存在します。
三塁コーチャー
攻撃において、ここが一番本塁に近いところです。得点に関わる、最後のジャッジをするところですから、非常に大事な役割になります。本書では、三塁コーチャーの役割、技術などをメインに、体系立てて説明していきます。
一塁コーチャー
走者一塁というのはすべての攻撃の起点になります。野球の攻撃は、一塁を起点にしてアウト3つのうちにどれだけ先へ進めるのか、ということになります。一塁を起点にどういった戦法で走者を先へ進めるのか。監督の意向を見て、選手にシグナルを送りながら、さらには相手投手の牽制球もありますから、そこにも注意しておかなければなりません。
ホームベースコーチ
これはネクストバッターの役割です。走者二塁で打者がセンター前ヒットを打ったとします。二塁から走者がホームへ走ってくる。そのときに右・左、どちらへスライディングするのがいいのか、それとも滑らないで駆け抜けるのがいいのか。ここをジャッジして走者に伝えなければいけません。ネクストバッターは、前の打者が打球を放ったらバットを置いて、ベース上に入って走者と正対し、ボールの位置を見ながらどこへ滑るのか、滑らなくていいのか、ジャッジして走者に伝える。
甲子園に出場するレベルでも、これができていないチームが多数あります。三塁コーチャーも大事ですけれど、ホームベースコーチは、得点になる直前の最終場面ですから、1点を争う攻防においてはすごく大事。しかもこれは1番打者から9番打者まで、出場する選手は全員できないといけない、スタメンじゃない選手でも、いつ出番がくるか分からないですから、選手全員ができなければいけません。
ベンチコーチ
アウトカウント、ライナーバックだよとか、コーチャーが分かっているだろうけれど、念のためベンチにいる選手が声を出してコーチャーに伝えるということです。コーチャーも1人でボックスに立っているわけですから、ちょっと意識に漏れがあったりすることがある。それに念を押すのがベンチコーチの役割です。
セルフコーチ
これは走者自身による判断です。全力疾走する走者から、ボールが見えない位置にある場合はコーチャーの指示に従いますが、ボールが見える位置にある場合は、自分自身で判断することが必要です。例えば人数が少なくて専任コーチャーがいない場合では、走者が自己判断しないといけないケースが多々あります。ハーフウェイの際は、走者自身が判断します。コーチャーからの指示は同時に出ます。
このように、ホームベースコーチ、ベンチコーチ、セルフコーチは、プレーヤー全員が頭に入れておいてください。
06コーチャーの基本
ここからは実戦論、試合に直結することですから、まずここは押さえておきたいです。
コーチャーには3つの重要な基本があります。それは「受け止める」「受け回す」「受けさばく」の3つです。
受け止める
例えば1死走者二塁、打者が中前打を打ちました。二塁走者は一気に本塁へかえってきます。走者は全力で、当然本塁へ行きたいと思っています。ベンチにも安打1本で本塁へかえってくるだろうという期待感があります。球場の観衆もそれを期待しているでしょう。
球場全体が回すことを期待する中で三塁コーチャーは冷静に判断する。受け止める。
なぜ「止める」ではなくて「受け止める」なのか。「本塁へ行く」という球場全体のエネルギーを、まず受けなきゃいけないんです。単なる「止める」ではない。甲子園や都市対抗……大事な試合になれば何万人もの観衆がいますから、まずそのエネルギーを受け止めて、そしてどうするのか。
止める場合においても、外野手の位置、前進守備なのかどうなのか。そういうところも見極めながら、受け止めるんです。
受け回す
走者が走ってきます。ベンチも球場も「回せ」という雰囲気です。三塁コーチャーは、それを受け止めておいて、回すということです。回す際には、もちろんリスクを負うことになります。
相手の外野手が打球を捕球したとき、走者の足が三塁ベースより手前にある場合、これは基本的に受け止めます、NO GO(ストップ)です。
相手の外野手が打球を捕球したとき、走者の足が三塁ベースを通過していた場合、通常でいうとゴーの判断です。基本は手前だったらストップ、回っていたらゴーです。ただ、相手外野手が極端な深い守備を取っていた場合は、走者が三塁ベースの手前であってもゴーです。
受けさばく
止めるか、回すか、究極の場面、「迷ったら回せ」という指導者もいますが、私の考えは逆です。「迷ったら止める!」次ページでその理由を説明します。
相手外野手が打球を捕球したとき、走者の足がベースをちょうど踏んだ、ジャストだったらどうするか。五分五分のときにどういう判断をするか。これが「受けさばく」です。打球がレフト前、ライト前に飛び、ジャストの場合はリスクがあります。センター前のジャストはチャンスありです。走者はチームで一番の俊足選手、ならばジャストで行かせよう。打順を考えて、次の打者ではヒットが続く可能性は低い。ならば行かせて相手外野手の悪送球を誘う。
試合前のシートノックからチェックして、あの外野手は肩があまり強くない、とか。たとえ肩が強くても、コントロールのよくない外野手は多いんです。一番鉄壁なのは肩が強くてコントロールがよい外野手ですが、あの外野手は肩は強いけれど、コントロールはよくないぞとか。そういうのをシートノックから見ておく。アナリストがいるチームならば、前の試合からチェックしておく。
NO GO(ストップ)かGO(ゴー)か、究極の場面で、三塁コーチャーが迷ってしまうのは仕方のないことです。プロ野球のコーチャーだって、一人前になるまでには2年かかるというんですから。
07コーチャーの鉄則
ここからは前ページの3つ、「受け止める」「受け回す」「受けさばく」をさらに掘り下げていきます。
最初に「止める」を覚える
球場全体が「それいけ」という雰囲気の中では、三塁コーチャーも「それいけ」になってしまいがち。そこでしっかり止められる心、冷静な心を持つことが大事。特に迷ったら止める。
武道の受け身と同じです。止めるは受け身、回すは攻撃技と考えてください。コーチャーに関して、これまでは、まず回しておいて、その経験から受け身を覚えるという考え方が多いです。その人が継続してコーチャーをやらせてもらえる場合なら、それでもよいかもしれませんが、高校野球や大学野球ではそういうわけにはいかないでしょう。公式戦の数はそんなに多くありませんから、何度もミスをすることは許されないのです。あいつは判断力が悪いんじゃないかという話になってしまうので。
そうなると、回しておいて失敗から学ぶというのではなく、まず原理原則、止め方をしっかり覚えなければいけません。
迷ったら止めよ!
迷っても、止めさえすれば次打者にチャンスをつなぐことができます。試合の流れを左右するような場面、もし迷っても止めればネクストチャンスが生きます。リスクを冒してチャンスを潰してしまったら、ゲームの流れをガラっと変えてしまいます。経験を重ねるうちに、迷う範囲が少なくなってきます。
条件反射で迷ったら止めるようにする。恥ずかしいことではないんです。今の自分の判断力では、ここは判断できない、だったら勇気を持って止めるんです。
どうしようかなと迷ってコーチャーがフリーズしてしまったら、走者もフリーズしてしまいます。そこから無理に回しても、迷った秒数がロスになって本塁でアウトになるケースはいっぱいあります。
スキルが上がってきて、三塁コーチャーの応用編になったら、アウトになりそうだけれど行かせる、外野手の焦りや暴投を誘う、というのも出てくるんですね。通常ならば止めるんだけど、敢えて行かせる。それは上級編です。
新チーム結成後の最初の大会なんかでは、経験のない者が三塁コーチャーを務めなければならないこともあります。まず基本は、迷ったら止めること。これはチーム全体で共有しておかなければいけません。
ジャストを極めよ
1死走者二塁、打者が中前打を放った。中堅手が打球を捕ったのと、走者が三塁ベースを踏んだのが同時、さぁどうするか。打球がレフト前、ライト前に飛び、ジャストの場合はリスクがあります。センター前のジャストはチャンスありです。経験を重ねるうちに、この「ジャスト」の場合の受けさばき、行かせるのか止めるのかというのが分かってきます。
相手外野手の守備位置、肩、コントロール、自陣の走者の足の速さ、走塁のうまさ、それらを加味して、瞬時に判断するわけです。
また、次打者の打撃力、アウトカウントもある。複合的に判断してジャストを極めるということ。これが三塁コーチャーの真骨頂なんですね。
相手の外野手、こちらの走者、打球の位置、シチュエーション、打順、得点差、アウトカウント。いろんなことが見えてくる中、一瞬で判断する。経験がないと、ジャストのときに判断しようがないわけです。高速コンピューターみたいにすぐ答えが出てくればいいですけれど、なかなかそんなに簡単にはいかない。そんなときは「迷ったら止めよ!」です。
08コーチャーの判断ポイント
三塁コーチャーの判断ポイントは3つです。この3つのポイントを明確にしておけば、三塁コーチャーの頭は整理できます。
走者の走塁能力を標準とし、外野手の守備能力も標準、守備位置は前進守備でもなく極端に後ろでもないとします。1死走者二塁、打者が外野へ安打を打ちました。
外野手が捕球したとき、走者が三塁ベース手前だったら基本的にはストップ。
外野手が捕球したとき、走者が三塁ベースを回っていたらゴー。
外野手が捕球したのと走者の足が三塁ベースを踏んだのが同時のときは勝負です。走者の走力、外野手の肩の強さとコントロール、得点差、アウトカウント、打順、次の打者の打力などを考慮に入れた上で、コーチャーが瞬時に判断しなければなりません。センター前のジャストはチャンスありです。
指導者はこの3つのポイントを明確にしておかなければいけないのです。実際にその場面でアウト、セーフになったときに、三塁コーチャーがそのポイントに則って走者に指示を出したかどうかを確認するのです。この判断ポイントを共有しているチームはまだ少ないです。ポイントを明確にしておいた上で、もし走者の足が三塁ベース手前だったのに回してしまってアウトになった場合、分析しなくてはいけません。逆に、走者の足が三塁ベースを過ぎていたのに三塁コーチャーが止めてしまった場合、「三塁ベースを回っていたのに、なぜ回さなかったの?」と。コーチャーは分析しなければならないのです。
三塁ベースジャストのとき、コーチャーがどういう判断をしたか。「相手外野手の肩がよく、次の打者の打力が高いので、あそこは止めました」。そういう判断ができていればOKです。単にアウトならダメ、セーフならよしという結果オーライではなく、なぜ回したのか、なぜ止めたのか、判断をした理由が大事。結果ではなくプロセスが大事なのです。
三塁コーチャーの3つの判断ポイント
1死走者二塁、打者が外野へ安打。外野手が捕球した瞬間の走者の足の位置で判断する。
三塁ベース手前
NO GOストップ
三塁ベース上(ジャスト)
JUST勝負・リスクあり
三塁ベース通過
GOゴー
ジャストのときは、走者の走力、外野手の肩の強さとコントロール、得点差、アウトカウント、打順、次の打者の打力などを考慮して瞬時に判断。レフト前・ライト前のジャストはリスクあり、センター前のジャストはチャンスあり。
図の内容をテキストで読む
- タイトル:三塁コーチャーの3つの判断ポイント(図①・写真②〜④)
- 図①:1死走者二塁、打者が外野(レフト前)へ安打。レフトが捕球した瞬間の、ランナー(二塁走者)の足の位置を見る。三塁ベース脇のコーチャーズボックスに三塁コーチャー。
- 写真② 走者の足が三塁ベースより手前……ストップ
- 写真③ 外野手の捕球と走者が三塁ベースを踏むのがジャスト……勝負
- 写真④ 走者の足が三塁ベースを越えている……ゴー
- 1死走者二塁、打者が外野への安打。外野手が捕球時、走者の足が三塁ベースより手前ならば(写真②)ストップ。三塁ベースを越えていれば(写真④)ゴー。外野手の捕球と走者が三塁ベースを踏むのがジャスト(写真③)だったときは、走者の走力、外野手の肩の強さとコントロール、得点差、アウトカウント、打順、次の打者の打力などを考慮に入れた上で、三塁コーチャーが瞬時に判断しなければならない。打球がレフト前、ライト前に飛び、ジャストの場合はリスクがあります。センター前のジャストはチャンスありです。